この記事の要点
- AI担当者を置く方法は、採用・兼任・外部委託の3つしかありません
- 費用だけを見ると兼任が最も安く見えますが、実際に最も多く失敗しているのが兼任です
- 採用は年600万〜900万円に加えて、募集から着任まで3〜6か月かかります
- 外部に置く場合は月10万〜30万円が目安です。ただし成果物が自社に残る契約かどうかで価値が変わります
AIを社内で進めようとすると、必ず同じところで止まります。進める人がいません。
ツールは足りています。情報も出回っています。それでも動かないのは、担当者がいないからです。この点は前の記事に書きました。
では担当者をどう置くか。選択肢は3つしかありません。採用する、既存社員に兼任させる、外部に置く。 それぞれの費用と、動き出すまでの時間を並べます。
この記事の数字について:弊社の料金は実測値です。年収と相場は、求人媒体の掲載レンジと各社が公開している料金ページを並べたもので、統計ではありません。目安としてお読みください。

① 採用する
費用の目安:年600万〜900万円+採用費
求人媒体でDX推進やAI活用の担当者を募集している例を見ると、経験者で年600万〜900万円という提示が中心です。人材紹介会社を使う場合は、理論年収の30〜35%が成功報酬として別途かかります。年収700万円なら、初年度は900万円を超える計算です。
ただし、費用より効いてくるのは時間です。
- 募集要件を決める:数週間
- 募集から着任まで:3〜6か月
- 着任してから成果が出るまで:さらに数か月
「今期中にAIで何とかしたい」という話には、そもそも間に合いません。
もう一つ、採用には固有の難しさがあります。募集要件を書くために、何を任せる人なのかを先に決めておく必要があるという点です。自社の業務のどこにAIを使うかが定まっていない状態で募集すると、「AIに詳しい人」という曖昧な要件になり、採ってみるまで力量が読めません。
採用が向くのは、すでにAI活用が回り始めていて、任せる仕事が具体的に列挙できる段階に来た会社です。
② 既存社員に兼任させる
費用の目安:追加費用なし(ただしその人の既存業務が圧迫される)
一番よく選ばれる方法で、一番よく失敗している方法でもあります。
失敗の理由ははっきりしています。
本業には締切があり、AI推進には締切がありません。
「手の空いたときに進めておいて」と頼まれた仕事は、手が空かない限り進みません。そして中小企業で手が空くことはまずありません。3か月後に進捗を聞くと、「ツールは触ってみました」で止まっています。
これは本人の意欲の問題ではありません。優先順位の問題です。
さらに、兼任には別の弱点があります。相談できる相手が社内にいないことです。詰まったときに調べる先がインターネットしかなく、自社の事情に合っているかどうかを判断できません。そして、その人が退職すると、進めていたことが丸ごと消えます。
兼任でうまくいく条件は1つだけです。
- 業務時間の20%以上をAI推進に充てると決める
- 何を減らすかを、経営者が先に決める
- 月次で進捗を見る場を作る
ここまでやれるなら、兼任は有効です。この3つのうち2つ目を飛ばした兼任は、まず動きません。
③ 外部に置く
費用の目安:月10万〜30万円
社外の人間にAI担当者の役割を担ってもらう形です。AI顧問と呼ばれます。
利点は2つあります。来週から動き出せることと、進め方をすでに持っている相手が来ることです。他社で何が定着して何が定着しなかったかを見ている分、最初の1業務の選定を間違えにくくなります。
弱点も2つあります。社内の事情はこちらから伝える必要があることと、選び方を誤ると助言だけで終わることです。後者は本当によくあるので、契約前に「今月は何が納品されますか」と聞いてください。
各社が公開している料金と、そこに何が含まれるかはAI顧問サービスを比べましたに並べています。
3つを並べると
| ① 採用 | ② 兼任 | ③ 外部 | |
|---|---|---|---|
| 初年度の費用 | 900万円前後 | 追加費用なし | 120万〜360万円 |
| 動き出すまで | 3〜6か月 | 来週 | 来週 |
| 社内への蓄積 | 残る | その人に残る | 契約による |
| 事業の文脈の理解 | 深い | 深い | 伝える必要がある |
| 止まるリスク | 採用できない | 本業に負ける | 相手の当たり外れ |
| 向いている段階 | 任せる仕事が明確 | 経営者が時間を確保できる | 何から始めるか未定 |
費用だけで比べると判断を誤ります
表の1行目だけを見れば、兼任が圧倒的に安く見えます。実際には、兼任は「動かないことのコスト」を計上していないだけです。
半年止まっていた場合、失っているのは半年分の削減時間です。弊社の実測でいえば、経理で週4時間、資料作成で1本あたり7.5時間、見積書で1件あたり37分が縮みました。これが半年分ずっと出ていなかったことになります。
AI活用の投資判断で見るべきは、費用ではなく「いつ動き出すか」です。
実際には、順番に切り替わっていきます
3つは排他ではありません。多くの場合、こういう順番になります。
- 外部に置いて、進め方の型を作る(最初の3〜6か月)
- 社内の1人を窓口として並走させる(この人が後の担当者候補になります)
- 回り始めてから、兼任の正式化か採用に切り替える
この順番の利点は、採用の募集要件が書けるようになることです。数業務を通したあとであれば、「うちのAI担当者に任せる仕事」を具体的に列挙できます。最初から採用で埋めようとして失敗するのは、ここが書けないまま募集してしまうからです。
どれを選ぶべきか
判断はこれだけで足ります。
- 任せる仕事が具体的に列挙できる → 採用を検討してよい段階です
- 経営者が、担当者の既存業務を減らす決断をできる → 兼任で進められます
- どちらも今は難しい → 外部に置くのが現実的です
弊社は3つ目にあたるサービスを提供しています。月額15万円(税別)、現在は事例掲載にご協力いただく4社限定で月額10万円、最低契約期間は3か月です。作った成果物の権利はすべて御社に帰属し、契約が終わったあともそのままお使いいただけます。
よくある質問
- AI担当者は社内で兼任させてはいけないのですか?
- 兼任そのものが悪いわけではありません。うまくいくのは、業務時間の20%以上をAI推進に充てると決めて、経営者がそれを守らせている場合です。「手の空いたときに」という前提で任せると、ほぼ止まります。本業には締切があり、AI推進には締切がないためです。
- AI人材を採用するといくらかかりますか?
- 求人媒体で提示されている年収レンジを見ると、経験のあるDX・AI関連の人材で600万〜900万円が中心です。人材紹介会社を使う場合は、理論年収の30〜35%が成功報酬として別途かかります。さらに、募集開始から着任まで3〜6か月、着任後に成果が出るまでさらに数か月を見ておく必要があります。
- 外部に任せると、社内にノウハウが残らないのではありませんか?
- 契約次第です。成果物の権利が自社に帰属し、プロンプトやマニュアルが自社の環境に残る契約であれば、使うほど社内に蓄積されます。逆に、提供側の環境でだけ動くものを納品する契約では、解約と同時にゼロに戻ります。契約前に「終わったあと何が残るか」を確認してください。
- 3つを組み合わせることはできますか?
- できますし、実際にそうなることが多いです。よくある形は、外部に置いて進め方の型を作り、社内の誰か1人を窓口として並走させ、回り始めてから採用や本格的な兼任に切り替えるという順番です。最初から採用で埋めようとすると、何を任せる人なのかが定義できないまま募集することになります。