この記事の要点
- 社内GPTという言葉は、カスタムGPT・会社契約のChatGPT環境・RAGで社内文書を検索させる自社構築システムの3つを指し分けられずに使われています
- カスタムGPTのナレッジは最大20ファイル、1ファイル512MBという公開仕様があり、社内規程を全部読み込ませることはできません
- 個人向けプランで作ったGPTは、学習利用の扱いも共有範囲も会社の管理下になく、作った社員が退職すれば設定もナレッジも会社に残りません
- 令和8年版情報通信白書によると、生成AI活用による業務変革について「組織的な取組はない」と答えた日本企業は27.0%で、米国1.4%を大きく上回ります
社内GPTを調べ始めると、記事によって指しているものが違うことに気づきます。ChatGPTの画面から数十分で作れると書いてあるものもあれば、数百万円のシステム構築の話になっているものもあります。
本当に知りたいのは、たぶん作り方そのものではありません。自社の規模でやる意味があるのか、エンジニアがいなくても回るのか、社内資料を入れて大丈夫なのか、いくらかかるのか。 この4つだと思います。
この記事は手順書ではなく、その判断材料としてまとめました。
この記事の数字について:他社サービスの仕様と料金は、提供元の公式ページで2026年8月2日に確認したものです。期間の目安は弊社が手を動かしている範囲での見立てで、統計ではありません。弊社について書いているのは、自社業務で実際にやっていることだけです。
社内GPTは、3つのうちどれかを指しています
まず用語を片づけます。社内GPTと呼ばれているものは、次の3つのどれかです。
1. カスタムGPT(GPTs) ChatGPTの中に、役割・口調・ルールと参照させる資料を設定して作る専用のチャットです。プログラムは書かず、設定画面から作ります。
2. 会社として契約したChatGPT環境そのもの 法人向けプランを契約し、社員のアカウントを会社が管理している状態をこう呼ぶ場合があります。作ったというより、整えたに近い意味です。
3. RAGで社内文書を検索させる自社構築システム RAG(検索拡張生成)とは、質問が来たときに社内文書から関連箇所を検索し、その内容を材料としてAIに答えさせる仕組みです。Azure OpenAI ServiceやAmazon Bedrockといったクラウド基盤の上に構築します。
費用も期間も、1つ目と3つ目では桁が違います。 記事や見積書を読むときは、まずどれの話かを確かめてください。
何ができて、何ができないか
できるのは、社内ヘルプデスク、議事録の要約、メールや提案書の下書き、マニュアルを踏まえた回答、営業資料のたたき台です。おおむね文章を読む・書く・まとめる作業にあたります。
効果が出ている領域は、すでに分かっています。総務省の白書でも、最も活用が進んでいる業務類型は「議事録・メール作成補助」でした(数字はAIエージェントとは?中小企業が任せられる業務に引いています)。議事録に絞った話は議事録のAI自動作成はどこまで可能かに書きました。
一方で、できないことを先に知るほうが失敗は減ります。
| できないこと | 理由 |
|---|---|
| 金額や在庫数の厳密な計算 | 言語モデルは計算を間違えても止まりません |
| 在庫・受注など基幹システムの実データ参照 | 連携を別途作らない限り、社内システムの中は見えません |
| システムへの書き込み | 読ませることと書き込ませることは、別の設計です |
| 責任を伴う最終判断 | 採否、与信、人事評価は、間違えたときに取り返しがつきません |
1つ目については、弊社が見積書の作成を仕組み化したときの記録に書きました。AIに拾わせて、計算はプログラムにやらせるという切り分けをしています。
2つ目と3つ目は、社内システムを読み書きさせる話になるため、社内GPTではなくAIエージェントの領域です。社内GPTは聞かれたことに答えて終わり、AIエージェントは目標を渡すと手順を判断して実行するところまで進みます。 この違いと、任せてよい範囲の線引きはAIエージェントとは?中小企業が任せられる業務に書きました。
作り方は3つ。費用の「形」が違います
3つのアプローチを費用の性質で並べると、次のようになります。金額そのものより、何に対してお金を払い続けるのかを先に見てください。
| ① 設定でつくる | ② RAGで構築する | ③ オンプレミス | |
|---|---|---|---|
| 中身 | 法人プランでカスタムGPTを作る | クラウド基盤の上に社内文書の検索を作る | 自社のサーバーにモデルを置く |
| 主に払うもの | 人数ぶんの月額ライセンス料 | 構築費+従量課金の基盤利用料 | サーバー調達費+構築費+保守 |
| 作れる人 | 社内の担当者で足ります | 開発できる人が要ります | 開発と基盤運用の両方が要ります |
| 期間の目安 | 数日〜2週間 | 1〜3か月 | 3か月以上 |
| 向いている会社 | まず1業務から試したい会社 | 文書量が多く、権限で出し分けたい会社 | 外部にデータを出せない制約がある会社 |
期間の目安は、弊社が手を動かしている範囲での見立てであり、統計ではありません。
②のAzure OpenAI Serviceは、トークンに応じた従量課金と、スループットを事前に確保する予約型(PTU)の2つの課金モデルがあり、単価はリージョンやデプロイ方式で変わります(Azure OpenAI Service 料金ページ、2026年8月2日確認)。使う量が読めないうちに従量課金の基盤から入ると、月額が見積もれません。
従業員10〜100名の会社であれば、①から始めて、足りない部分が見えてから②を検討する順番が現実的だと考えています。
その前に、いま払っているライセンスで足りないか
確認してほしいのは、すでに契約しているツールのAI機能で済む可能性です。Microsoft 365 Copilot Business(既存のMicrosoft 365プランに追加するアドオン)は、日本では年間サブスクリプションが1ユーザーあたり月額3,148円相当、月間サブスクリプションが月額3,778円です。2026年8月2日時点では、2026年7月1日から9月30日までのプロモーションとして、年間サブスクリプションが月額2,698円相当で表示されています(いずれも税抜、Microsoft 365 Copilot 料金ページ、2026年8月2日確認)。プロモーションの有無で金額が変わるため、申し込む前に公式ページで確認してください。SharePointに置いた社内文書を参照させる使い方なら、ここで足りる業務もあります。
社内GPTを作ることが目的ではありません。その業務が楽になればよいだけです。
カスタムGPTで決めるのは、3つだけです
①を選んだ場合、設定するのは次の3つです。
Instructions(指示) 役割、口調、守らせるルールを日本語で書きます。「あなたは総務の担当者です」「就業規則にないことは推測せず、総務に確認するよう案内してください」といった文章です。ここが回答の質をいちばん左右します。
Knowledge(ナレッジ) 参照させる社内マニュアル、規程、FAQをファイルでアップロードします。OpenAIのヘルプセンターによると、添付できるのは最大20ファイル、1ファイルあたり最大512MBで、テキスト・ドキュメント系には1ファイル200万トークンという上限もあります(OpenAIヘルプ「Knowledge in GPTs」および「File uploads FAQ」、2026年8月2日確認)。
「社内規程を全部読み込ませれば何でも答える」ようにはなりません。 よく聞かれる質問に答えられる資料だけを選ぶほうが、回答も安定します。
Capabilities・Actions(機能と連携) Web検索、データ分析、画像生成のオン・オフを選びます。社内の規程だけに基づいて答えてほしいなら、Web検索は切るほうが安全です。Actionsを使えば外部システムと連携できますが、ここから先は設計と保守の話になります。
個人アカウントで作ったものを、社内に配らないでください
ここが実務上いちばん大きな分岐だと考えています。
OpenAIのGPTs Data Privacy FAQによると、GPTとの会話がモデルの改善に使われるかは利用プランによって異なり、Business・Enterprise・Eduプランでは既定で学習に使われません。 Free・Plus・Go・Proといった個人向けプランでは、オプトアウトの設定次第で学習に使われることがあります(OpenAIヘルプ「GPTs Data Privacy FAQs」、2026年8月2日確認)。
共有範囲も変わります。GPTの共有先は「招待した人のみ」「ワークスペース内でリンクを知っている人」「ワークスペース全員」といった範囲から選べ、管理されたワークスペースでは管理者が共有オプションを制限または無効化できます(OpenAIヘルプ「Sharing and publishing GPTs」、2026年8月2日確認)。
そして、もう一つ問題があります。個人アカウントで作ったGPTは、会社の資産になっていません。 作った社員が退職すれば、設定もナレッジも一緒に会社から出ていきます。
ChatGPT Businessの料金は、多くの国で1ユーザーあたり月払い25米ドル、年払いなら月あたり20米ドルで、2ユーザーから利用できます(OpenAIヘルプ「Manage billing on the ChatGPT Business plan」、2026年8月2日確認)。社内資料を扱うなら、ここから始めてください。
社内資料を入れる前に確認する4つ
- 社外に見せて問題のない内容か。 NDA(秘密保持契約)で取引先から預かった資料は、設定にかかわらず入れないと決めるほうが安全です。
- 個人情報が含まれていないか。 氏名、連絡先、評価、健康に関する記載を見てください。
- 古い情報が混ざっていないか。 旧版の規程が残っていると、AIは平然と旧版の内容で答えます。
- その資料が正であることを、誰が保証するか。 ここが決まっていないと、誤答の責任の所在も決まりません。
2つ目について補足すると、個人情報保護委員会は入力を一律には禁じていません。利用目的の範囲内であることと、提供事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認することを求めています。条件つきで使える、という整理です。社内の情報をどこで区分し、どこから先は入れないと決めるかはChatGPT社内利用ルールの作り方にまとめました。
「セキュリティが心配」で止まらず、この確認をした日を記録に残してください。弊社の考え方は情報の取り扱いに書いています。
費用は、初期と運用を分けて考えてください
初期費用だけで見ると、たいてい判断を誤ります。効いてくるのは運用側です。知識ファイルを更新し続けるのは誰か。規程が改訂されたら誰が差し替えるか。回答がおかしいという申告を誰が受けるか。
ここを決めずに作ると、中身は必ず古くなります。 そして古いと分かった瞬間に、社員は使うのをやめます。月に1時間でよいので、更新の担当と時間を先に確保してください。
補助金の枠組みも変わりました。IT導入補助金は令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されています。補助率と補助額、そして補助対象が事務局に登録されたITツールに限られるという注意点はAIエージェントとは?中小企業が任せられる業務に整理しました。費用の考え方に効いてくるのは、クラウドの利用料が最大2年分まで補助対象経費に含まれる点です。初期費用だけでなく運用側にも効きます。
最初の1業務は、4つの条件で絞ります
活用例を並べた記事は多いのですが、選び方まで書いたものはあまり見かけません。弊社は頻度が高い・手順が決まっている・間違えても取り返しがつく・1人で完結するの4条件で絞っています。社内GPTを作る場合は、ここに成果物が文書であることが加わります。
弊社が自社で最初に手をつけたのも、資料作成と見積書という定型文書でした。サービス資料20ページの制作は8時間から30分になり(2本目以降は10分)、見積書1件の作成は40分から3分になりました。いずれも自社での実測値です。
もう一つ、順番として大事なことがあります。導入前に、その作業が何分かかっているかを測っておいてください。 測っていないと、あとから効果を比較できません。
作ったのに使われない。原因は「文化」ではありません
令和8年版情報通信白書によると、生成AI活用による業務変革に関する組織的な取組状況について「組織的な取組はない」と回答した割合は、**日本27.0%に対して米国1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%**です。一方で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると回答した割合は日本86.4%(米国90.9%、ドイツ91.6%、中国98.1%)で、利用そのものには大きな差がありません(令和8年版情報通信白書 概要、2026年8月2日確認)。
つまり、使ってはいるけれど、業務に組み込む取組が組織として存在しないという状態です。個人の意識や研修不足の問題ではありません。
同白書は、業務変革の環境整備について、日本は「業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境がある」「生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照可能なデータベースを構築したりしている」の2項目で、回答割合が他の3か国より顕著に低いと記述しています。
欠けているのは作る技術ではなく、学べる場と、参照できるデータの整備です。 社内GPTを作る行為は後者の入口にあたります。前者を用意しないまま配ると、使い方が分からないまま放置されます。
もう一つ、中小企業で頻繁に起きるのが属人化です。作った人が一人で運用を抱え、その人が忙しくなった時点で止まります。運用を誰が引き受けるかを、作る前に決めてください。
内製か外注か
社内に手を動かせる人がいて、その時間を月に数時間確保できるなら、①の範囲は内製で足ります。設定画面から作れるものに外注する理由は、あまりありません。
外注を検討するのは、業務の切り出しから設計まで任せたい場合か、②以降に進む場合です。そのときは金額より先に、成果物の権利が誰のものになるかを確認してください。プロンプトやナレッジの設計が提供側の資産のままだと、契約が終わった時点でゼロに戻ります。弊社は成果物の権利をすべて顧客に帰属させ、契約終了後も使える形にしています。
明日からやれること

- いま契約しているツールのAI機能で足りないかを確認する。 追加の契約はそのあとです。
- 3条件(頻度が高い・手順が同じ・成果物が文書)で1業務を選び、いま何分かかっているかを測る。
- 使う資料を、社外に見せてよいか・個人情報がないか・最新版かの3点で選別する。
- 法人向けのプランで作り、更新の担当者と時間を先に決める。
作る作業そのものは、この4つのうち最も短く終わります。
弊社は、この流れを1か月で1業務ずつ引き受けるAI顧問サービスを提供しています。業務の選定から社内GPTやAIエージェントの制作、社内で使われる状態になるまでの確認までを、こちら側で手を動かして進めます。
導入企業の事例は公開していません。載せているのは自社でやった記録だけです。何から手をつけるべきかの整理だけでもお役に立てますので、まずは資料をご覧ください。
よくある質問
- 社内GPTとは、結局どれのことを指しますか?
- 大きく3つの意味で使われています。ChatGPTの中に役割と参照資料を設定して作るカスタムGPT(GPTs)、会社として契約して社員に配ったChatGPT環境そのもの、そしてAzure OpenAIなどを使って社内文書を検索させる自社構築システムの3つです。費用も期間も大きく違うため、記事や見積書を読むときは、まずどれの話をしているのかを確かめてください。中小企業が最初に検討する対象になるのは、多くの場合1つ目だと考えています。
- 社内資料をアップロードすると、AIの学習に使われますか?
- 契約しているプランによって変わります。OpenAIのGPTs Data Privacy FAQによると、Business・Enterprise・Eduプランでは既定でモデルの学習に使われません。Free・Plus・Go・Proといった個人向けプランでは、オプトアウトの設定次第で学習に使われることがあります(https://help.openai.com/en/articles/8554402-gpts-data-privacy-faqs 2026年8月2日確認)。社内資料を扱うなら法人向けプランを契約してください。
- 社内規程やマニュアルを全部読み込ませれば、何でも答えてくれますか?
- なりません。OpenAIのヘルプセンターによると、カスタムGPTのナレッジに添付できるのは最大20ファイル、1ファイルあたり最大512MBです(https://help.openai.com/en/articles/8843948-knowledge-in-gpts 2026年8月2日確認)。またテキスト系のファイルは1ファイルあたり200万トークンという上限もあります。全部入れるのではなく、よく聞かれる質問に答えられる資料だけを選んで入れるほうが、回答の精度も上がります。
- 作ったのに社内で誰も使いません。何が原因ですか?
- 個人の意識ではなく、業務に組み込む取組が組織として存在しないことが原因だと考えています。令和8年版情報通信白書によると、生成AI活用による業務変革について「組織的な取組はない」と回答した日本企業は27.0%で、米国1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%を大きく上回ります(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/summary/summary01.pdf 2026年8月2日確認)。誰のどの作業を置き換えるかを決めるのが先です。