中小企業でAIが定着しない、たった一つの理由

ツールが難しいからでも、社員のリテラシーが低いからでもありません。AIを進める担当者が社内にいないからです。10〜100名規模の会社で実際に起きていることを整理しました。

この記事の要点

  • 中小企業でAIが定着しない原因は、ツールの難しさでも社員のリテラシーでもありません
  • 原因は、AIを進める担当者が社内にいないことです。誰の仕事でもないため、誰も進めません
  • ツールを配って研修をしても、使う業務が決まっていなければ元に戻ります
  • 担当者を置く方法は、採用・兼任・外部委託の3つしかありません

「ChatGPTは触ってみた。でも、そこで止まっている」

従業員10〜100名の会社の経営者と話すと、ほぼ必ずこの話になります。ツールは知っている。重要性も分かっている。それでも半年前と何も変わっていない。

難しいから止まっているのではない

よくある説明は「AIは難しいから」「社員のリテラシーが足りないから」です。しかし現場を見ると、そうではないことが分かります。

ChatGPTに議事録を貼り付けて要約させる作業は、Excelの関数より簡単です。難易度の問題なら、とっくに広まっているはずです。

止まっている理由は、進める担当者がいないからです。

社長が担当になると、必ず止まる

AI担当者がいない会社では、社長が担当を兼ねることになります。そして、こうなります。

  1. 社長が担当になる
  2. 本業が忙しくなる
  3. AIの検討が後回しになる
  4. 誰も使わないまま、話が消える

これは意志の問題ではありません。構造の問題です。専任がいない仕事は、必ず優先順位の下に落ちます。

「全社導入」から始めると、さらに止まる

もう一つ、よくある失敗があります。全社に一斉に展開しようとすることです。

全社導入には、ルール作り、研修、アカウント管理、効果測定が必要になります。準備だけで数ヶ月かかり、その間に熱が冷めます(ルールは完成させてから配るより、A4 1枚で始めて足していくほうが機能します)。

現実的なのは逆です。一つの業務、一人の担当者から始める。その人の仕事が実際に楽になれば、隣の人が「それ、うちの仕事でもできる?」と聞いてきます。広がり方が変わります。

最初の一歩は「昨日の仕事」から

どの業務から始めるかを決めるとき、私たちは必ずこう聞きます。

昨日、どんな仕事をしましたか。朝から順番に教えてください。

「AIで何ができますか」と聞かれても答えは抽象論にしかなりません。しかし「昨日の仕事」なら誰でも答えられます。

聞く相手は社長ですが、対象がその方の仕事とは限りません。現場で滞っている業務のほうが効果が大きいこともあります。その場合は、実際にその仕事をしている方から直接うかがったほうが早く、正確です。

いずれにせよ、次の3つで絞り込みます。

  • 一番時間がかかった仕事は?
  • 一番面倒だった仕事は?
  • 一番繰り返している仕事は?

この3つが重なるところに、最初にAIへ引き継ぐべき仕事があります。

まとめ

AIが進まないのは、AIが難しいからではありません。進める人がいないからです。

裏を返せば、担当者さえいれば進みます。社内に置けないなら、外に置くという選択肢もあります。

よくある質問

社員のAIリテラシーが低いことが原因ではないのですか?
原因ではないと考えています。多くの会社で、ChatGPTを個人で触ったことがある社員は複数います。止まっているのは、自分の業務のどこに使うかを決める作業が誰にも割り当てられていないためです。これは知識ではなく役割の問題です。
まず全社研修から始めるのは間違いですか?
順番の問題です。使う業務が決まっている人には研修が効きます。決まっていない人が受けると、その場では納得しても翌週には元に戻ります。1業務でも先に通してから研修をすると、受け取られ方が変わります。
経営者自身が担当者になるのは有効ですか?
立ち上がりは最も速くなります。ただし継続しないことが多く、理由は経営者の時間が最も割り込みを受けやすいためです。進める役は別に置き、経営者は「何を減らすか」を決める役に回るほうが続きます。

AI担当がいなくても、
会社のAI活用資産は増やせます。

まずは60分。昨日の仕事を一緒に振り返り、最初にAIへ引き継ぐ仕事を見つけましょう。

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