議事録のAI自動作成はどこまで可能か。精度・機密・法定議事録の線引き

AI議事録ツールは文字起こし・話者識別・要約・ToDo抽出の4つに分かれます。どこまで自動化でき、何が人に残るのか。精度の確かめ方、機密情報の線引き、法定議事録に使えない理由、そして「出るのに読まれない」問題まで整理しました。

この記事の要点

  • AI議事録ツールは「文字起こし」「話者識別」「要約」「ToDo抽出」の4機能に分かれ、精度の話はどれを指すかで意味が変わります
  • 取締役会や株主総会の議事録は会社法が記載事項と保存期間を定めており、音声に現れない事項が多いためAI要約をそのまま使えません
  • 会議の音声をクラウドに上げてよいかは、提供事業者が個人データを取り扱う契約になっているかどうかで分かれ、取り扱う場合は委託先の監督が必要になります
  • AIが短くするのは作成の時間であり、確認の時間は残ります。しかも出力の誤りに気づけるのは、その会議に出ていた本人だけです

「議事録 AI 自動作成」で調べているとき、本当に知りたいのはツールの一覧ではないはずです。自社の会議の音声で読める文字起こしが出るのか、出てきた要約をそのまま配ってよいのか、顧客名や金額の出る会議をクラウドに上げてよいのか。ここが決まらないまま比較表を眺めても、選べません。

この記事では、議事録のどこまでをAIに任せられて、何が人に残るのかを分けて書きます。

この記事の数字について:他社サービスの仕様と料金は、提供元の公式ページで2026年8月2日に確認したものです。法令の条文はe-Gov法令検索で同日に確認しました。弊社について書いているのは、自社業務で実際にやっていることだけです。

AI議事録ツールが実際にやっている4つのこと

まず前提を片づけます。「議事録を書くAI」という一つの機能は存在しません。 別々の4つの処理が並んでいるだけです。

  1. 文字起こし:音声を文字にします
  2. 話者識別:どの発言が誰のものかを振り分けます
  3. 要約:文字起こしを短くまとめます
  4. ToDo抽出:決まったことや宿題を箇条書きにします

精度の話がかみ合わないのは、この4つのどれを指しているかが人によって違うからです。文字起こしが正確でも話者識別が崩れれば議事録としては読めませんし、両方できていても要約の粒度が合わなければ書き直しになります。

Web会議ツールに内蔵されている機能もあります。Microsoft Teamsのライブ文字起こしは日本語に対応しており、文字起こしはOneDriveとSharePointに会議の記録と共に保存されます(Microsoft公式ドキュメント、2026年8月2日確認)。対面の会議で使うなら、会議室の中央に置くマイクを別途用意してください。

そもそも機能が動かない会議があります

ここは見落とされがちですが、先に確認してください。自社の会議が機能の対象外だと、精度の議論をする前に何も出てきません。

  • Google Meetの自動メモ生成は、15分から8時間までの会議向けです。一度に1つの言語にのみ対応し、複数の言語で行われる会議には対応していません(Google公式ヘルプ、2026年8月2日確認)
  • Teamsのインテリジェント要約を使うには、Teams PremiumまたはMicrosoft 365 Copilotのライセンス割り当てと、文字起こしの有効化が必要です。録画がオフの場合は「記録、話者、トピック、チャプターなしで要約」になり、ビデオの要約は会議10分以上かつ録画が必要です(Microsoft公式ドキュメント、2026年8月2日確認)

15分未満の朝会、立ち話、日本語と英語が混ざる会議は、期待した出力が出ません。ツールを選ぶ前に、自社で議事録が必要な会議がこの条件に入っているかを数えてください。

精度の数字は、測定条件を見ないと意味がありません

文字起こしや話者識別の精度を数字で示している情報を見かけますが、マイク構成、同時発話の有無、話者の人数、専門用語の比率で結果は変わります。測定条件が書かれていない数字は、自社の会議に当てはめられないと考えています。

代わりに、契約前にこの手順で確かめてください。

  1. 自社の会議を1本だけ録音します(できれば5人以上が参加する、社内用語の多いもの)
  2. 同じ音源を、候補のツール2〜3つに通します
  3. 全体の正解率ではなく、固有名詞の誤変換だけを数えます(社名、商品名、部署名、人名)
  4. 話者の取り違えが何か所あったか、それを直すのに何分かかったかを測ります

無料プランや無料トライアルは、この検証のために使うものだと考えています。

固有名詞は辞書登録である程度は直せますが、上限と運用の負担があります。Nottaの公式料金ページによると、単語登録はフリー3語、プレミアム200語、ビジネス1,000語とプランで差があります(Notta料金ページ、2026年8月2日確認)。TeamsのCopilotユーザー辞書は1辞書あたり最大1,000語、会議で使えるようになるまで最大24時間かかり、作成・更新できるのは管理者のみで、グループ通話と1:1通話ではサポートされません(Microsoft公式ドキュメント、2026年8月2日確認)。

つまり「固有名詞は辞書で直せます」で終わりません。新しい取引先名が増えるたびに、誰がいつ辞書を更新するのかまで決めて、初めて運用に乗ります。

議事録には種類があり、AIに任せられる範囲が違います

ここがこの記事の核心です。「議事録」と一言でいっても、法令が様式・記載事項・保存期間を定めているものと、社内メモに過ぎないものが混ざっています。

議事録の3つの種類とAIに任せられる範囲。社内共有メモはほぼ任せられ、決定の証跡は人の補筆が要り、法定議事録は様式が決まっている

法令が定めているものの例を挙げます。

議事録の種類 定めている条文 主な義務
取締役会議事録 会社法施行規則101条3項、会社法371条1項 記載事項の列挙、10年間の本店備置
株主総会議事録 会社法318条2項・3項 本店に10年間、支店に写しを5年間備置
衛生委員会の記録 労働安全衛生規則23条3項・4項 3年間の記録保存、議事概要を労働者へ周知

取締役会議事録について、会社法施行規則101条3項は、開催された日時及び場所(出席の方法を含む)、議事の経過の要領及びその結果、決議事項について特別の利害関係を有する取締役の氏名、議長が存するときは議長の氏名などを列挙しています(e-Gov法令検索、2026年8月2日確認)。

AI要約が作れるのは「話された内容の圧縮」です。 出席の方法、議長の氏名、特別の利害関係の有無といった事項は、会議中に口頭で語られないことがほとんどなので、文字起こしからは生成できません。要約の粒度と、法定議事録に求められる粒度は種類が違います。

衛生委員会も同じです。労働安全衛生規則23条3項は、議事の概要を労働者へ周知する方法を掲示・書面交付・電磁的記録の3つに限定しています(e-Gov法令検索、2026年8月2日確認)。AIが出した要約を社内チャットに流すだけでは、この周知にあたらない可能性があります。

機密情報をどこで切るか

会議の録音は、参加者の個人情報を取得する行為でもあります。個人情報の保護に関する法律17条1項は利用目的をできる限り特定するよう定め、21条1項は取得した場合に利用目的を本人へ通知または公表するよう定めています(e-Gov法令検索、2026年8月2日確認)。「AIで議事録を作るために録音します」と会議の冒頭で伝える運用を、最初から入れておくほうが安全だと考えています。

クラウドに上げること自体の扱いは、提供事業者が個人データを取り扱う契約になっているかどうかで分かれます(記事末尾の「よくある質問」に条文を引きました)。判断材料は公式ページに書かれています。たとえばRimo Voiceの公式サイトには「ISO27001・ISO27017認証取得済みで、データは日本国内で安全に保管」「会議データはAI学習に使用されることはありません」と記載されています(Rimo Voice公式サイト、2026年8月2日確認)。

そのうえで、会議の種類ごとに通す・通さないを先に決めてください。 線の引き方は、たとえば次のようになります。

会議の種類 扱いの例
社内の定例、進捗共有、勉強会 AIに通す
顧客が同席する打ち合わせ 相手に伝えて了解を得てから通す
採用面接、人事評価面談、内部通報のヒアリング 通さない
未公表の財務情報、係争に関わる会議 通さない

この表をそのまま使う必要はありません。大事なのは、迷ってから考えるのではなく、先に書いておくことです。

この線の引き方は、社内の情報を「そのまま入れてよい」「確認済みのアカウントでのみ入れてよい」「入れない」の3つに区分する考え方と同じです。会議に限らず社内全体のルールとして1枚に書き下ろす手順はChatGPT社内利用ルールの作り方にまとめました。

Teamsには、会議のチャットメッセージ、ライブキャプション、トランスクリプト、AIによって生成された分析情報のコピーや転送を開催者が制限できる設定があり、開催者ごとの既定はオンになっています(Microsoft公式ドキュメント、2026年8月2日確認)。こうした制御が使えるかどうかも、選定時の確認項目に入れてください。弊社自身の情報の扱い方は情報の取り扱いに書いています。

うまくいかないこと、よくある誤解

作成は短くなりますが、確認は残ります

AIの出力は100%正確ではないため、人の最終確認が要ります。ここで効いてくるのが、確認できるのは会議に出ていた本人だけという制約です。文字起こしを読んだだけの人は、要約が事実と違っていても気づけません。

削減できるのは「作成の時間から確認の時間を引いた分」です。導入前に「作成にかけていた時間がまるごとゼロになる」と見積もると、確認の時間が残った時点で期待外れになります。見積もるときは、確認にかかる時間を先に差し引いておいてください。

議事録は出るようになったのに、誰も読みません

これは導入した後に起きやすい問題だと考えています。原因は、議事録の目的を分けていないことにあります。

  • 記録として残したいのか
  • 欠席者に伝えたいのか
  • 決定の証跡にしたいのか
  • 次の行動を起こしたいのか

目的が違えば、必要な粒度も、置く場所も、読む人も変わります。全文の文字起こしと3行の決定事項を同じ場所に同じ形で置くと、どちらも読まれません。目的から逆算して、粒度と保存先を先に決めてください。

ToDoが抽出されても、それだけでは動きません

AIは決定事項と宿題を箇条書きにしてくれますが、箇条書きは議事録の中に留まります。すでに使っているタスク管理の場所(チャットの担当者宛て、案件シート、タスク管理ツール)へ流れる導線を作らないと、抽出された時点で消えます。ここは仕組みの問題で、AIの精度とは関係がありません。この考え方はAIが定着しない理由にも通じます。

方針を決める前に、個人が無料アカウントで試すこと

比較記事の定番アドバイスは「まず無料プランで試す」ですが、順番に注意が必要です。総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成AIの活用方針について「積極的に活用する方針である」「活用する領域を限定して利用する方針である」と回答した中小企業の合計は58.1%でした(令和8年版情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節、2026年8月2日確認)。裏を返せば、4割強の会社はまだ方針を決めていないことになります。

方針が決まらないまま、個人が個人のアカウントで会議音声をアップロードする状態が、いちばん危ういと考えています。 試すこと自体は良い判断ですが、試す音源と試す人を先に決めてください。

明日からやれること

  1. 議事録が必要な会議を、種類ごとに書き出します(法令が定めているもの、証跡になるもの、社内メモの3つに分けます)
  2. 会議の長さと使っている会議ツールを確認します(15分未満や日英混在は対象外になる可能性があります)
  3. AIに通さない会議を先に決めます(採用面接、人事評価、未公表の財務情報あたりが候補です)
  4. 社内会議を1本だけ録音し、候補ツール2〜3つに同じ音源を通します(固有名詞の誤変換だけを数えます)
  5. 辞書の更新担当と、出力の置き場所を決めてから契約します(決めずに始めると、出力だけが溜まって読まれなくなります)

どの業務から手をつけるかの決め方は最初の1業務の選び方に、AIに数字を任せてはいけない線引きは見積書をAIに渡した記録に書きました。議事録を含めて、どこまでをAIに渡してよいかの全体像はAIエージェントとは?中小企業が任せられる業務に、出てきた要約を社内マニュアルと組み合わせて使う形は社内GPTとは?に書いています。

弊社は、こうした「どこまで任せて、何を人に残すか」の設計と、実際に動く仕組みの制作までを引き受ける顧問サービスを提供しています。1か月で1業務ずつ、御社の仕事をAIへ引き継いでいきます。

議事録は、AIに渡す業務としては入口に向いています。ただし渡し方を間違えると、読まれない文書が毎週増えるだけになります。整理だけでもお役に立てますので、まずは資料をご覧ください。

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よくある質問

AIが自動作成した議事録を、取締役会議事録としてそのまま使えますか?
使えません。会社法施行規則101条3項は、取締役会議事録に開催日時・場所(出席の方法を含む)、議事の経過の要領及びその結果、決議事項に特別の利害関係を有する取締役の氏名、議長が存するときは議長の氏名などを記載するよう定めています。これらの多くは会議中に口頭で語られないため、文字起こしからは生成できません。さらに会社法371条1項は10年間の本店備置を義務づけています。AIの出力は下書きとして使い、記載事項は人が補ってください。(e-Gov法令検索、2026年8月2日確認)
会議音声をクラウドの議事録ツールに上げると、個人データの第三者提供にあたりますか?
個人情報保護委員会のガイドラインQ&A A7-53は、判断基準を「保存している電子データに個人データが含まれているかどうかではなく、クラウドサービスを提供する事業者において個人データを取り扱うこととなっているのかどうか」としています。取り扱わないこととなっている場合は本人同意も法25条の監督義務も不要で、取り扱う場合は委託先の監督が必要です。(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-53/ 2026年8月2日確認)
「AI学習に使われません」と書いてあれば安心ですか?
プランによって条件が変わるため、自社が契約するプランの記載を見てください。たとえばNottaの公式料金ページでは「AI学習なし」「SAMLシングルサインオン」「操作ログ」が、エンタープライズプラン(要相談)の追加機能として並んでいます。比較記事の◯×表は上位プランを前提にしていることがあり、実際に契約する下位プランでは条件が違う場合があります。(https://www.notta.ai/pricing 2026年8月2日確認)
短い定例や、日本語と英語が混ざる会議でも自動要約は動きますか?
動かない場合があります。Google Meetの自動メモ生成は15分から8時間までの会議向けで、一度に1つの言語にのみ対応し、複数の言語で行われる会議には対応していません。Microsoft Teamsのビデオの要約は会議10分以上かつ録画が必要で、文字起こしだけの会議では使えません。15分未満の朝会や日英混在の会議は、そもそも機能の対象外だと考えて設計してください。(各社公式ヘルプ、2026年8月2日確認)

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