経理の週5時間を、Slackで動くAIエージェントに渡した記録

freeeとNotionにつないだAIエージェントをSlackに置いて、経理にかけていた週5時間を週1時間にしました。実際の画面、作るのにかかった10時間の内訳、そして「任せなかった業務」まで書きます。

経理は、外に出すか、社内で抱えるかの二択になりがちです。

弊社は後者でした。記帳も、請求も、経費も自分たちでやる。ただし週に5時間かかっていました。月20時間です。

これを週1時間にしました。やったのは、Slackの中にAIエージェントを1体置くことです。

何に5時間かかっていたか

作業そのものより、ツールとツールの間を人が運んでいる時間が大半でした。

会計はfreee、社内の台帳はNotion。この2つは自動ではつながりません。だから毎回、freeeから書き出して、表計算で整えて、Notionへ転記して、取引先マスタと突き合わせる。

判断が要る仕事ではありません。運搬です。

何をどう渡したか

Slackに「高橋 亘」という名前のAIエージェントを置きました。社内の誰かに頼むのと同じ形にしたかったので、人の名前にしています。

Slackで依頼すると、エージェントがfreeeとNotionを操作して結果を返す構成図

ポイントは、エージェントに手順を教えていないことです。

「freeeから2026年1月から5月のデータを取って、Notionに入れておいて」と書くと、どのツールをどの順で呼ぶかは向こうが決めます。人が手順書を書いてその通り動かす、という作り方をやめました。

やっているのは、見積書の作成、経費の管理、領収書の登録、そして請求・売上の突き合わせです。

実際の画面

これが実際のSlackです。社名と金額はマスクしています。

Slackで担当者がAIエージェントにfreeeからのデータ取得を依頼し、エージェントが取引先マスタ・請求・売上・支払・経費の登録結果と確認事項を報告している画面

右側にエージェントのプロフィールが出ているとおり、Slackの中では社員と同じ扱いです。メンションで呼び、スレッドで返ってきます。

返ってきているのは登録結果だけではありません。対象期間、登録件数、そして判断に迷った点が並んでいます。この最後の項目が重要で、あとで書きます。

前と後

経理作業の工程比較。人がやる工程が6つから2つに減った

時間だけを見ると週5時間が週1時間ですが、残った1時間の中身が変わったほうが大きいと思っています。

前の5時間は運搬でした。後の1時間は確認です。同じ1時間でも、後者は減らそうとは思いません。

作るのにかかった時間は10時間ほど

丸2日ではなく、10時間です。ただし内訳がすべてを語っていて、コードを書いている時間はごく一部でした。

  • どの作業を渡し、どれを渡さないかを決める
  • freeeとNotionのどの項目を、どう対応させるかを決める
  • 実際に動かして、返ってきたものを見て直す

一番長いのは1つ目です。ここを飛ばすと、動くけれど使わないものができます。

うまくいかなかったこと

勘定科目が、名前ではなくIDで返ってきた

一番厄介だったのがこれです。

freeeから支出データを取ると、勘定科目が名称ではなくIDで返ってくるケースがありました。「消耗品費」ではなく数字です。Notion側の区分と突き合わせようがありません。

エージェントはこのとき止まらず、いったん「その他」で登録したうえで、その旨をSlackに書いて返してきました。

先ほどの画面の一番下に書いてあるのがそれです。これが正解だったと思っています。止まると人が調べに行くことになりますが、「入れたうえで報告」なら、あとでまとめて直せます。

AIに業務を渡すときは、分からなかったときにどう振る舞うかを先に決めておく必要があります。選択肢は3つです。

  1. 止まって人に聞く
  2. 推測して進み、黙っている
  3. 推測して進み、報告する

2番だけは避けなければいけません。気づかないまま台帳が汚れていきます。

最初から全部を渡そうとした

最初は「経理を全部やってもらう」つもりで作り始めて、途中でやめました。

振込の実行と、最終的な数字の確認は渡していません。 技術的にできないからではなく、間違えたときに取り返しがつかないからです。

渡す業務を選ぶ基準は、時間の長さではなく「間違えてもすぐ気づけるか」だと思っています。台帳への登録は、間違えても直せます。振込は直せません。

Notionの構造を先に直す必要があった

エージェントの問題ではなく、こちらの問題です。

台帳の項目が人間の運用に合わせて曖昧に作られていて、「ここは自由記述で、みんな好きに書いている」という列がいくつもありました。人は文脈で読めますが、機械は読めません。

結果として、AI化の作業の半分は、既存のデータベースの整理でした。これは他社でも同じことが起きると思います。

外に出さずに済むようになった

一番の変化はこれかもしれません。

経理をBPOに出すか、パートの方を採用するか、という話が社内で何度か出ていました。いまはその話が出なくなりました。1人(1エージェント)で回っているからです。

ただし、これは「経理担当を減らせます」という話ではありません。弊社はもともと専任がおらず、経営側が片手間でやっていた状態でした。専任の方がいる会社では、なくなるのは仕事ではなく運搬の時間です。

同じことをやるなら

必要だったのは4つです。

  1. 渡す業務と渡さない業務を先に分ける(基準は「間違えてもすぐ気づけるか」)
  2. つなぐ先のデータ構造を整える(ここが作業量の半分)
  3. 分からなかったときの振る舞いを決める(推測して進み、必ず報告する)
  4. 置き場所を、人が普段いるところにする(新しい画面を開かせない)

4番目も効きました。専用の管理画面を作らず、Slackに置いたので、使い方の説明が要りませんでした。

弊社では、こうしたエージェントを御社の業務に合わせて作ってお渡しする顧問サービスをやっています。経理に限らず、いま社内で「運搬」になっている作業があれば、そこが最初の候補です。

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